作品の特徴

フェルメールが使ったカメラ・オブスキュラとは?その原理と歴史

カメラオブスキュラ
vermeer

フェルメールの作品はどれも写実性が徹底されていました。

なんと、フェルメールの作品をもとにコンピューターで部屋を再現したり、ミニチュアの立体模型を作れるほどの精密さでした。

家具の一つ一つに至るまで、ほとんど齟齬はなかったと言われています。

その遠近法があまりにも正確なため、フェルメールはカメラ・オブスキュラを使ったのではないかとも推測されています。

この記事では、カメラ・オブスキュラとはどのようなものなのか、その原理と歴史について紹介しています!

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①カメラ・オブスキュラとは?

カメラオブスキュラ
ポータプルタイプのカメラオブスキュラ

カメラ・オブスキュラとはカメラの前身です。

一方の壁に開けた小さな穴から真っ暗な内部に光が差し込むと外部の景色が反転して映し出されるという仕組みです。

三次元の空間が忠実に平面に映し出されるため、遠近法や輪郭が掴みやすいです。

17世紀にはポータブルなタイプが登場し、レンズも取付けられました。

②カメラ・オブスキュラの原理と歴史

カメラオブスキュラの原理
カメラオブスキュラの原理

ラテン語でカメラは部屋、オブスキュラは暗いという意味です。

その原理はピンホールカメラと同じで、被写体の各点で乱反射した光のうちから、ピンホールに到達する1点の光だけを平面に投射することで、写し出された像を得るというものです。

この原理は実は意外に古くから知られていて、紀元前5世紀ごろに活躍した中国の思想家・墨子とその弟子たちが記した著書には、針穴を通過する光が交差し、倒立した像ができるという記述があります。

また紀元前4世紀に活躍したギリシャの哲学者アリストテレスは、樹木の葉の隙間から差し込む光が地面に丸い形を作ることに着目しました。

それは日食の日になると、丸い形が欠けた太陽と同じように欠けるのをみて、それが太陽の像であることに気づいたのです。

10世紀から11世紀にかけてアラブ圏で活躍した物理学者のイブン・ハイサムは、部屋の外に面した壁面に小穴を開け、反対側の壁に写った画像で太陽の日食を観測しました。

ハイサムは様々な大きさの穴を開けて実験しています。

その結果、小さい穴を通った光だけが壁面に像を結ぶことを発見しており、彼は日食を観察するためにも、カメラ・オブスキュラを使ったのです。

西洋世界ではイギリスの哲学者にしてカトリック司祭であったロジャー・ベーコンが、同じく日食観察用にカメラ・オブスキュラを活用しています。

初期の頃のカメラ・オブスキュラは部屋と同じほどの大きな箱でした。

その片方に小さな針穴を開けることで、外の景色が穴とは反対側の内壁に像を描き出してくれるというものでした。

そして画家がこの部屋に入り、壁に写し出された像を描き写せば、リアリティに富んだ下絵を完成することができたのです。

③フェルメールとカメラ・オブスキュラ

絵画芸術
絵画芸術

フェルメールも、この最新技術を使っていたと思われます。

フェルメールはカメラ・オブスキュラを使い、擦りガラスに投影した映像をトレースして下絵を作っていたようです。

カメラで統制した写真は、目で見た風景とは違った遠近感光の輝きを写し出してくれることが多いです。

フェルメールの作品にも、そういう独特な雰囲気が醸し出されています。

写真がまだ世の中になかった時代、肖像画は記念写真の代わりを果たしていました。

また風景画はその時代を記録するものでした。

そうした意味からも、カメラ・オブスキュラを使って創作するということ自体が新鮮な手法で、とても意義があることだったのです。

フェルメールの代表作の1つである【絵画芸術】は、アトリエを暗幕で仕切り、片方を暗室のような状態にして、そして暗幕に小さな穴を開けたことで、暗室はカメラの内部のような状態を作り出して、奥の壁に映し出された絵画芸術の世界を描いたものだとされています。

まさにカメラ・オブスキュラを駆使した作品だといえます。

④おわりに

実は、カメラ・オブスキュラの使用を疑問視する人も一定数います。

「作品にはカメラ・オブスキュラの投影像と一致しない点がある」「この時代はまだ精度が低くトレースに向いていない」などが、反論の根拠です。

あるいは、カメラ・オブスキュラは補助程度にとどめ、最終的にはオリジナリティを発揮して描いたという見方もあります。

遠近法や光の表現を追求したフェルメールが、時代の最先端をいく光学機器に関心を持っていたとしても不思議ではありません。

ただ、決定的な証拠がなく、カメラ・オブスキュラを使用したか否かについては、いまだに決着がついていないのです。

ちなみに、フェルメールの遺品の中にカメラ・オブスキュラはなかったそうですが、知人から借りた可能性もあり、使わなかった証拠とはなり得ないのです。

この記事では、フェルメールが使ったカメラ・オブスキュラのその原理と歴史についてまとめました。

下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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