【フェルメール】取り持ち女の作品解説【決定版】
【取り持ち女】は、聖書のエピソードを主題に物語画から風俗画へと近づくフェルメールの過渡期に描かれた作品です。
この記事では、そんな【取り持ち女】について解説しています!
①作品の概要
◎ドリスデン国立絵画館蔵(ドイツ・ドレスデン)
◎1656年
◎油彩・カンヴァス
◎140×130cm
(右から三人目)取り持ちによって娼婦を買おうと、右手でコインを渡している男(右から2人目)。
『新約聖書』のエピソードの一つ「放蕩息子」が題材だと考えられる作品です。
16世紀フランドルで流行したカルヴァッジョ風の画題であり、宗教画というより風俗画に近いです。
左端の男性は【絵画芸術】の画家と服装が一致しており、フェルメールの自画像ではないかと考えられています。
本作は数少ない制作年が記された作品の一つで、他の作品の制作年代を推定する基準にもなっています。
②作品の見どころ・解釈
【取り持ち女】は当時オランダで流行していた「売春宿」を描いたものですが、これも金貨の提供と引き換えに売買される愛という、ひとつの愛の形を表現しているといえます。
若い女性は男性に寄り添っており、その表情からは金銭に対する貪欲さよりも、ある種の満足感を見てとれるという点で、単なる金貨の代償としての愛であるかということについては疑問が残ります。
娼婦の卑猥さを強調するのではなく、微妙な表情と仕草で人間間の気持ちを表し、享楽的なはずの場に内省的な静けさをもたらしているところがポイント!
③作品の技法・画法・背景
16世紀以来、フランドルの画家たちは、キリストのたとえ話「放蕩息子」の絵画化に関心を持ち、放蕩息子が娼家で欲望の限りをつくして遊ぶ姿を描きました。
その表向きの様子は、聖書を典拠としながらも、限りなく風俗画に近いです。
つまり、物語画から風俗画への転身を企てる画家には取り組みやすい画題といえます。
オランダではカラヴァジスト(カラヴァッジョ風の画家)がこの主題に早くから取り組みました。
フェルメールの義理の母がカラヴァジストであるファン・バビューレンの〈取り持ち女〉を所有していたことが判明しています。
フェルメールは、【マルタとマリアの家のキリスト】では構図法と光で、そして本作では主題の選択でカラヴァッジョ様式を取り入れたのです。
ちなみに、このバビューレンの取り持ち女はフェルメールの最期の作品【ヴァージナルの前に座る女】の画中画に描かれています。
④終わりに
【取り持ち女】という作品は、フェルメールの画法や主題を変える一つの大きなきっかけとなる作品だったとも言えるでしょう。
この作品から、フェルメールはどんどん風俗画を描いていきます!
下記では、他にもフェルメールの全作品を解説していますので、コチラもあわせてご覧ください。