【フェルメール】小路の読み方と作品解説【決定版】
フェルメールが描いた絵画【小路】の読み方は【こみち】です。
この作品は、フェルメールの故郷を描いた温かみのある風景画です。
この記事では、そんな【小路】について解説しています!
①作品の概要
◎アムステルダム国立美術館所蔵(オランダ・アムステルダム)
◎1658年ごろ作
◎油彩・カンヴァス
◎53.5cm×43.5cm
人物画で知られるフェルメールの、現存する2点の風景画の一つです。
ちなみにもう1点は【デルフトの眺望】です。
フェルメールの故郷デルフトでは、16世紀半ばに事故や火災で中世の建物の多くを失い、17世紀半ばに記録として都市景観画を描くことが流行しました。
本作品は、フェルメールが実家から見える養老院を描いたものだといわれていますが、実在した風景に脚色を加えたものだとの説もあります。
しばしばフェルメールのアトリエの窓から見える実家「メーヘレン」の裏通りを描いたのではないかとも言われており、この作品の場所についてはいまだに諸説あります。
ごく小さく描かれた人物たちが、平穏の暮らしの温かさを効果的に伝えています。
②作品の見どころ・解釈
階段状の破風のある建物は現在のデルフトでも見ることができます。
中央を境に、右側は垂直のファザード、左側は背丈の低い家屋と空を見せて奥行き感を出す非対称構図により、日常を象徴する家並みの存在感を強めています。
伝統的な建物の右端を大胆にたち落とす構図で真正面から描きました。
風景画でありながらも、道端で遊ぶ子どもや縫いものをする婦人の姿など穏やかな日々の生活が丁寧に描かれており、17世紀のデルフトの街を散策しているような気分になります。
【デルフトの眺望】より先に描かれた【小路】は横長のパノラマ風景とは対照的な縦長で、建物そのものに焦点を当てています。
自身が追及する美のために実際の光景を巧みに操作したフェルメールは、本作品もきっと色々な要素を加え、あるいは削ぎ落としたとも考えられています。
風俗画を主とするなかで、デルフトの風景を描いた背景には、おそらく1654年の火薬庫爆発事故が関係しています。
すでに落ち込み始めていたデルフトの経済はさらに悪化し、60年代後半から人口も減少しました。
フェルメールは、素朴で清潔で美しいデルフトを、絵の中に永遠に閉じ込めたかったのかもしれません。
③作品の画法・技法・背景
フェルメールが特に影響を受けたといわれている画家はピーテル・デ・ホーホです。
17世紀オランダ風俗画を代表する1人であり、フェルメールと同時代に同じデルフトで活動し、交流もありました。
フェルメールの作品のいくつかは、デ・ホーホの作品から着想を得ていたことがうかがえます。
【小路】も、建物を正面から描いた構図、開口部の奥行きの見せ方などがデ・ホーホの《デルフトの中庭》によく似ています。
しかし、《デルフトの中庭》が室内画の延長という印象なのに対して、【小路】には屋外ならではの明るさがあり、デルフトらしい歴史的な建物が際立っています。
フェルメールは先例にならいつつ、主題をより美しく効果的に描くことに長けていました。
フェルメールの故郷デルフトは「オランダの真珠」と呼ばれる美しい古都でした。
現在も【小路】の建物のように階段上の破風をもつ伝統的な建物が、街のあちこちに見られます。
④おわりに
この記事では、【小路】についてまとめました。
【小路】はその当時のデルフトの街の様子を窺い知れる作品といえるでしょう。
下記では、他にもフェルメールの全作品を解説していますので、コチラもあわせてご覧ください。