全作品解説

【名画】真珠の首飾りの女の所蔵は?画家は?その意味とは?【決定版】

真珠の首飾りの女の作品解説
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【真珠の首飾りの女】は、女性を引き立てる白い壁が特徴的な作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】【真珠の耳飾りの少女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。

この記事では、そんな【真珠の首飾りの女】について解説しています!

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①作品の概要

基本データ

◎ベルリン国立美術館所蔵(ドイツ・ベルリン)

◎1662〜1665年ごろの作品

◎油彩・カンヴァス

◎56.1cm×47.4cm

真珠の首飾りを結ぶためのリボンを両手で持ち上げて見とれている女性が描かれています。

その視線の先には、小さな鏡が掛けられており、身支度する女性のふとした瞬間を描き出しています。

X線調査(オートラディオグラフィー)により、当初は壁右半分に地図が、右手前の椅子の上にリュートが描かれていることがわかっていますが、ともに塗りつぶされています。

リュートはマンドリンに似た弦楽器で、複数の弦を弾いて和音を出すことから、「人間関係」特に「恋人」のシンボルとされてきました。

リュートがイスの上に描かれたままであれば、少女がこれから恋人のもと向かおうと身支度を整えている場面だと想像できましたが、フェルメールはこれを消しました。

オートラディオグラフィー:絵画の化学的な調査方法の一つ。一定時間、微弱の放射能にさらした絵画を写真フォルムに密着させ、各顔料が放射する放射能でフィルムを感光させ、絵画に使われた顔料のデータを画像化する方法。塗りつぶしたモチーフなどの像が鮮明に得られることがある。

つまり、構図は、【青衣の女】とほとんど同じでしたが、地図を排除することで、窓から入る光そのものが主役であるかの印象になり、衣装の黄色の色彩が際立つようになりました。

地図や音楽といった世俗の香りが強いモチーフをあえて排除したことで、女性の内面にスポットが当たるとともに、光の作り出す微妙な濃淡の様子を引き立たせる効果が生まれています。

また、地図は、上半身と重なるように描かれていましたが、制作の途中で塗りつぶされました。

②作品の見どころ・解釈

真珠の首飾りの女のモチーフ・解説

本作でも印象的に使われている真珠は、フェルメールが度々作品に登場させているモチーフです。

フェルメールにとって、当時オランダで装飾品として流行っていた真珠は光を表現する絶好の媒体でした。

また、真珠は聖母の「純潔」を象徴します。

そのため、本作の女性は聖母マリアではないかという説もあります。

光が当たっているテーブルの上には、化粧用のハケと紙切れと小さなお碗が、その下方には光が届かず、布地に覆われています。

最初はこの布は短く、テーブルの下には床が描かれていましたが、少女にだけ視線を集めるように変更しました。

また、フェルメールは「青の画家」であるのと同時に「黄色の画家」でもあり、女性が羽織る黄色のマントは、現存する作品の内、6点の作品に描かれています。

この作品のマントもその一枚で、上着とカーテンの黄色がことさら美しく映え、画面に温かい印象を与えてくれます。

モチーフとなったマントを実際にフェルメールは所持しており、死後に作成された財産目録には「白い縁取りのついた黄色いサテンのマント」と記されていて、亡くなるまで手元に置いていました。

このマントの袖口や襟元には、イタチ科のオコジョの毛皮がついており高級品であることがわかります。

かつては庶民が着ることがなかった毛皮を描くことで、虚栄心への戒めを示したのではないかと考えられています。

オコジョの毛皮は王侯貴族に愛用されて、ロシアから輸入されていたため当時値段は高かったようです。

純白になる冬毛が最も好まれ、所々に斑点があるのは、一年中色が変わらない尻尾の色です。

③作品の技法・画法・背景

フェルメールは、1660年代に入り、窓辺の一隅に女性が独りたたずみ、何事かに没頭するという、彼ならではの構図の型を完成させ、次々に印象深い作品を仕上げていきました。

身支度にいそしむ女性を描いた【真珠の首飾りの女】はその典型的な一例です。

このテーマそのものには前例があり、例えば、ヘラルト・テル・ボルフは、小姓とお手伝いの女の手を借りて身支度する実に華やかな場面を描いています。

身支度する女(ヘラルト・テル・ボルフ)
ヘラルト・テル・ボルフ「身支度する女」

しかし、フェルメールの【真珠の首飾りの少女】には、女性の放心の一瞬を受け止める空間を描いており、静寂が染みわたる空間はフェルメールならではのものです。

その独特の空間効果は、白と黄、この2色の濃淡と濃い紺色だけの、実にシンプルな色遣いによるところが大きいです。

それらの色調を逸脱するのは女性のリボンの鮮やかなオレンジ色だけです。

何一つ掛かっていない背後の壁の効果も大きく、柔らかな光に照らされたこの壁は、日常生活に充満するごちゃごちゃした喧騒を全て取り払って、静かに女性を包み込んでいます。

④おわりに

本作の壁ほど大きな空白は、他の作品には見られない最大の魅力の一つです。

「身づくろいする女性」は当時のオランダで好まれたテーマでしたが、ほとんどが大きな鏡や使用人などとともに描かれていました。

フェルメールはそうした小道具を用いない「引き算の美学」で静かで穏やかな空間を表現することができたのです。

この記事では、【真珠の首飾りの女】の見どころなどを解説しました。

下記では、他にもフェルメールの全作品(全37作品)をまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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