全作品解説

【フェルメール】青衣の女の意味やその解説【決定版】

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【青衣の女】はシンプルな室内に差し込む雄弁な光を見ることができる作品で、作者は【真珠の耳飾りの少女】【牛乳を注ぐ女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。

この記事では、そんな【青衣の女】について解説しています!

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①作品の概要

基本データ

◎アムステルダム国立美術館所蔵(オランダ・アムステルダム)

◎1663年ごろ作

◎油彩・カンヴァス

◎46.5cm×39cm

青い上着を羽織って一心に手紙を読む女性が描かれています。

どこの誰から届いたのか、夫のなのか恋人なのか、書かれているのは嬉しい知らせなのかそうではないのか、表情からうかがい知ることはできませんが、だからこそこの作品を見る人は、自由に想像できます。

この作品は、モチーフとなるものがかなり少なく、選び抜かれた家具の置き場所やシンプルな空間の構成が高く評価されています。

②作品の見どころ・解釈

青衣の女のモチーフと構図

【青衣の女】は【窓辺で手紙を読む女】から4〜5年を経た本作で、主題は共通していますが、この作品には窓が描かれていません。

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しかし、室内は柔らかな光で満たされ、地図と女性の頭部は同じ色調で混ざり合い、人物と空間がより一体感をもって描かれています。

また、部屋の奥行きも描かれておらず、遠近法を用いないシンプルな構図です。

卓上の物も比較的少なく、あえてモチーフを限定していることがわかります。

構図がシンプルになり、服装や小道具を簡素にすることで色彩の明暗が強調され、遠近は光と影で表現されています。

フェルメール独特の静かで落ち着いた室内画は、この光と影の表現によって完成されました。

また、壁の大きな地図は手紙の差出人が遠い異国にいることを暗示し、空いた椅子はその不在を強調しています。

さらに、19世紀の画家ゴッホがこの絵を「手紙を読む身重の女性」と日記に書いているように、大きく膨らんだ女性のお腹は妊婦のようにも見えます。

しかし、妊娠しているように見える女性は、妊娠しているのではなく当時流行していた着こなしだったという説もあります。

というのも、当時ヨーロッパで好まれていたスペイン風のコルセットはオランダではすでに廃れており、女性たちは厚手の綿の入った腰上までのスカートをゆったりと履いていたからです。

また、この女性はフェルメールの妻カタリーナであるとの説もあります。

造船業が盛んだった17世紀のオランダでは、木材加工の技術も高く、これを活用した木製の家具はシンプルな設計ながらしっかりとした作りで、ヨーロッパで人気を博していました。

しかし、家具の実物はほとんど残っていないので、絵画に描かれたテーブルやイスが、当時を知る手がかりになっています。

この布張りのイスは【音楽の稽古】などにも描かれたものです。

また、2010年〜2011年に行われた修復によって、変色した表面のニスが取り払われたため、フェルメールが描いた当時に近い「フェルメールブルー」が再現されました。

さらに、イスに打たれた留め具の光の表現が見えるようになっただけでなく、かつての補修で書き換えられてしまっていた手前にあるイスの足も、本来の形に戻されました。

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③作品の画法・技法・背景

士官と笑う女
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他のヨーロッパ諸国に比べ、17世紀オランダでは初等教育が大いに浸透し、大人の識字率は90%に達していましたが、書字率となると男性57%、女性37%という数字に下がります。

それでも、オランダの女性の書字能力は、当時のヨーロッパにあっては、飛躍的に高かったようです。

【青衣の女】で手紙を読んでいるのは、そんな文字化された世界を生きてきた女性です。

使われている色彩は、黄、青、白の濃淡だけで、実に大胆な色遣いです。

構図は【真珠の首飾りの女】の元々の構図によく似ています。

ただし左側の窓は描かれず、外界とのつながりは、もっぱら背後の壁の地図によって示されています。

とはいえ、その外界は女性の頭部へと内容が流れ込んでいく手紙に結局は注目されていきます。

ちなみにこの地図は、大きさも色も異なりますが、【士官と笑う女】に描かれた地図と同一で、フェルメールが所蔵していたネーデルラント(現在のオランダとベルギーの一部)の地図です。

この作品には、他の作品において何らかの形で示されてきた幾何学的透視法の痕跡がどこにもありません。

ひたすら色彩モチーフの相互の大きさの違いと重なり合いだけで空間が示唆されています。

まるでフェルメールが、自らの色彩の力、構成の力を試しているかのような作品です。

地図と、女性の頭部の色彩はほとんど同じで、フェルメールは茶色の明度を微妙に変えて、女性の頭部が地図から浮き立つように工夫しているのです。

【士官と笑う女】にも地図は描かれていますがその色彩は異なっています。

④おわりに

この記事では、【青衣の女】の見どころや画法・背景などを解説しました。

この作品は、フェルメールの作品の中でもとてもシンプルな作品で、色遣いも限定していますし、得意とする遠近法も用いられていないのが最大の特徴といえるでしょう。

下記では、他にもフェルメールの全作品(全37作品)をまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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