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【有名絵画】真珠の耳飾りの少女の解説【決定版】

真珠の耳飾りの少女の作品解説
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【真珠の耳飾りの少女】は、謎めいた少女の印象的な表情が特徴的で、作者は【牛乳を注ぐ女】でもお馴染みのヨハネス・フェルメールです。

とりわけ本作品は人気が高くフェルメールの代表作ともいえます。

この記事では、そんな【真珠の耳飾りの少女】について解説しています!

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①作品の概要

真珠の耳飾りの少女
基本データ

◎マウリッツハイス美術館所蔵(オランダ・ハーグ)

◎1665年ごろの作品

◎油彩・カンヴァス

◎44.5cm×39cm

潤んだ大きな瞳と、少し開いた口元という、まさに振り向いた瞬間を写真で捉えたかのような本作品は、「オランダのモナ・リザ」とも呼ばれています。

ターバンの青と衣服の黄色、わずかな白、そしてくちびるの赤と使われている色は少ないですが、それが平坦な黒い背景によって引き立てられています。

この個性的な顔立ちの少女は、誰がモデルなのかわかっていませんが、トローニー(不特定多数の胸像)説が有名です。

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本作は、グイド・レーニ作といわれている《ベアトリーチェ・チェンチの肖像》と構図が似ていて、参考にした可能性も指摘されています。

ベアトリーチェ・チェンチの肖像(グイド・レーニ)
グイド・レーニ「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」

②作品の4つの見どころ・解説

真珠の耳飾りの少女の見どころ・解説

1.宝石を作ってできた絵の具

強い印象を与える青の絵の具は、「海を越えてきた青」を意味する「ウルトラマリンブルー」と呼ばれ、普通の絵の具の100倍の値段がついていました。

それは原料のラピズラズリが、中東のアフガニスタンから海を越えて運ばれる、純金と同じほど高価な宝石だったためです。

時間による色の劣化も少なく、現在も輝きを放っています!

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2.17世紀オランダで流行した真珠

真珠は古代から「海の宝石」として珍重されており、フェルメールが活躍した17世紀のオランダでも流行しました。

少女の真珠は直径2cmとかなり大ぶりなため、フェルメールが想像で描いたのではないかと言われています。

1994年以前には真珠の右下あたりにもう一つのごく小さな反射光がありましたが、1882年の修復の際に絵の具の一片が偶然付着したものであることが判明しました。

不自然な反射光だったので、1994年の修復時に取り除かれました。

3.光の反射を狙った白い襟

白い襟は、画面のアクセントとして効果的ですが、フェルメールは、光の反射を表現するための重要な仕掛けとしても使っています。

大きな耳飾りの下部の丸みがかった部分を見ると、表面にわずかに映る白い襟が描き込まれていることがわかります。

左頬には真珠に反射した光が描かれており、随所に細やかな表現が見られます。

4.印象的な振り返るポーズ

ふと振り返った姿か、それとも別れを推しみながら向き直った姿なのか、わずかに顔を傾けて肩越しにみつけてくるポーズは、様々な物語を想像させる本作品最大の魅力です。

制作途中で画家が構図を変更するのは珍しくないことですが、首の後ろが多少修正されている以外はその痕跡はありません。

この印象的なポーズは最初からイメージが完全にかたまっていたことがわかります。

③作品の画法・技法・背景

真珠の耳飾りの少女の画法

1.背景の闇への工夫

背景に透明の緑色がかった絵の具を重ねることで深みとニュアンスを出しています。

ちなみに、この絵は肖像画ではなく、不特定の人物を描いた「トローニー」と呼ばれるものです。

肖像画のように特定の人物に似せる必要も職業や性格を表す背景や小道具を描く必要もないので、自由な発想で描くことができました。

2.親切な眼差しを描くテクニック

こちらをじっと見つめる、やや灰色がかった潤いのある青い瞳に置かれた一点の白は、いきいきとした少女の表情を演出するフェルメールのテクニックの一つです。

まるで少女と2人だけの空間にいるような錯覚を起こさせる、この親密なまなざしから、モデルは妻や娘などフェルメールと親しい人物と言われていますが、真偽は不明です。

下唇を明るく光らせ、上唇の輪郭をぼかすことによって、みずみずしい魅力を表現しています。

3.巻いているターバン

当時のオランダには、カラフルなターバンをする習慣はなかったのですが、イスラムやインドなど異国文化の象徴であったので、ファッションの先端ともされました。

フェルメールは少女に東洋的な装いをさせることで、神秘性を高めようとしたと考えられます。

また、当時のイタリアで話題となっていた絵をヒントにしたという説もあります。

4.左上から降り注ぐ光

少女を照らす光には、包み込むような優しさがあります。

当時の地図によればフェルメールのアトリエは北東に面しており、光源の高さと考え合わせると、これは北から当たる午後の光であることがわかっています。

左上から光が注ぐ構図は、フェルメールの室内画の特徴です。

このことから、フェルメールはアトリエの東側の壁に向かって絵画制作していたと推測できます。

④おわりに

この記事では、【真珠の耳飾りの少女】の見どころや画法・背景などを紹介しました。

今では100億円の価値があるとも言われるこの作品は、死後200年にあたる1881年の競売にかけられた際には、評価できないほど汚れており、わずか2ギルダー30セント(約1万円)で落札されたと言われています。

下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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