真珠の耳飾りの少女に見られるトローニーとは?その意味を解説
真珠の耳飾りの少女に描かれている少女は肖像画ではなく、トローニーと呼ばれる作品です。
トローニーとは一体なんでしょうか?
この記事では、そんなトローニーについて紹介しています!
トローニーとは?
トローニーとは、不特定の人物の胸あたりから上を描いた作品のことです。
初めは物語画などの部分習作として制作されていましたが、やがて完成作として流布するようにもなりました。
描かれた人物には現実を生きる人間の強い意志や臭みがなく、なので肖像画と似ているようで、大きく異なります。
フェルメールが描いた2点のトローニー
フェルメールが描いたトローニーは2点現存しています。
1696年の売り立てには3点のトローニーが出てくるので、失われた(見つかっていない)作品もいくつかあると推測されます。
①真珠の耳飾りの少女
現存作品のうちの1点は、東洋風の衣装をまとった【真珠の耳飾りの少女】です。
大きな真珠のイヤリングをつけた少女がコチラを見つめています。
ただそれだけの作品ですが、大きな濡れた目、半ば開いた唇からは、今振り向いたといった、動画を見ているかの臨場感が漂います。
黄、青、白、そしてポイントに赤というシンプルな色遣いは【真珠の首飾りの女】と同じですが、背景が暗く抑えられている分、人物が浮き立って見えるとともに、場の匿名性が高まっています。
この作品は1660年の半ば、フェルメールが最も勢いのあった時期の作品です。
②少女
衣装の空想的な設定と個性的な顔立ちとがどこかチグハグな感じを与えます。
羽織っている布の折りジワが煩わしいほど強調されており、頭部の印象がやや薄れ気味です
【少女】は【真珠の耳飾りの少女】よりも後の1660年末描かれた作品です。
トローニーの歴史
元来ではフランス語のトローニュに由来し、1400年ごろには、偽りの外観や顔を意味する一般的な言葉として用いられました。
16世紀には顔、表情、頭部と同じ意味合いを持つようになりますが、大抵は醜い顔、奇妙な顔といった否定的な含みがついて回りました。
17世紀に入ると、画中の細部としての頭部、頭部だけを描いた絵画、肖像画、不特定あるいは実在の人物の頭部を描いた絵を指す言葉として広く使われるようになりました。
現在の美術史研究では、もっぱら不特定の人物の頭部を描いた絵を指す言葉として用いられます。
おわりに
この記事では、【手紙を書く女と召使い】の作品の見どころや画法、背景などをまとめました。
フェルメールの風俗画の多くは単身像で、しかもモチーフの数を少なくする傾向にあったので、見た目はきわめてトローニーに近いといっていいでしょう。
ただし、トローニーはいつも女性を対象にするわけではありません。
フェルメールとほぼ同時期アムステルダムで活躍していたレンブラントもたくさんのトローニーを描いてきていますが、その多くは男性をモチーフとしています。
もしかするとフェルメールは、憧れの物語画で有名になったレンブラントに対抗する形で、女性のトローニーを手がけてみたのかもしれません。
下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。