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【フェルメール】天文学者のモデルはスピノザ?絵画の解説【決定版】

天文学者の作品解説
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【天文学者】は光あふれる小部屋で思索にふける学者を描いた作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】【真珠の耳飾りの少女】などでお馴染みの、ヨハネス・フェルメールです。

この作品に描かれている学者のモデルはオランダの哲学者であるスピノザという説がありますが、別人物という説もあります。

この記事では、そんな【天文学者】について解説しています!

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①作品の概要

天文学者
基本データ

◎ルーブル美術館所蔵(フランス・パリ)

◎1668年の作品

◎油彩・カンヴァス

◎50cm×45cm

フェルメール作品には珍しく男性が描かれたこの作品は、男性1人をモチーフにした【地理学者】と対をなします。

いずれも左側の窓にある小部屋というフェルメールらしい構図で、光が降り注ぐ窓辺で地球儀に触れるのは、思索にふける長髪の若い男性です。

②作品の4つの見どころ・解説

【絵画】天文学者の解説

1.天球儀と天体観測器

航海の必須アイテムである天球儀天体観測器(アストロラーベ)が描かれており、画中の男性が「天文学者」であることが分かります。

天球儀は1660年頃アムステルダムの地図製作の名匠ヨドクス・ホンディウスの手によって作られたものであることがわかっています。

2.天文学者が読む書物

数学者アドリーン・メティウス著の「天文学・地理学案内書」より、星の位置を天体道具で測る方法が示されています。

3.天文学者が着る服

天文学者が羽織っている服は富裕層のステータスとされた「Japon(ヤポン)」と呼ばれた日本の着物です。

4.壁に掛けられた絵

壁の右側に掛けられた絵は《モーセの発見》で、【手紙を書く婦人と召使い】に描かれているものと同じです。

旧約聖書で「エジプト人のあらゆる教育を受けた」と記されているモーセは、17世紀には科学と結びつけられていました。

③作品のモデルは誰?

レーウェンフックとスピノザ

モデルは、フェルメールと同い年のオランダの哲学者アントニー・ファン・レーウェンフックという説やオランダの哲学者バールーフ・デ・スピノザという説があります。

アントニー・ファン・レーウェンフックはフェルメールと同い年で同じデルフトに生まれた科学者です。

顕微鏡を用い、初めて微生物を観察した人物としても知られています。

バールーフ・デ・スピノザもフェルメールと同い年で同じデルフトに生まれた哲学者です。

しかし、どちらがモデルなのかはいまだにはっきりしていません。

どちらにせよ、まばゆい光に包まれた地球儀が“輝く世界”を思わせ、そこに手を伸ばす男性の様子は、その後の天文学の発展を予言するかのようです。

また、フェルメールとスピノザの関係は書籍にもなっていますので、コチラも参考にしてください。

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③作品の画法・技法・背景

ヨハネス・フェルメール【地理学者】

ヨーロッパで本格的に科学への関心が高まったのは15世紀のルネサンスの時代です。

コペルニクスやガリレイなどの科学者たちが画期的な理論を唱えただけでなく、芸術家ダ・ヴィンチも解剖学や水力学など多岐にわたる研究に夢中になったのは有名です。

科学技術の急速な進歩により、15世紀半ばに大航海時代が到来し、宗教改革を経て、17世紀には自然科学が飛躍的に発展し、「科学革命の時代」を迎えました。

かのニュートンが「万有引力の法則」をはじめ新たな理論を発表したのもこの時代です。

このような科学の進歩は絵画にも影響を与え、特に当時のオランダ絵画では医者や科学者たちが頻繁に登場します。

フェルメールの【天文学者】と【地理学者】は、どちらも海上交易で潤ったオランダでは花形というべき職業でした。

フェルメール作品の中では大変貴重なことにこの2つの作品には1年違いの年記が表記されています。

サイズもほぼ同じで、構成や配置、人物の風貌も類似することなどから、一対とみなす研究者が多いです。

④おわりに

この記事では、【天文学者】の作品の見どころやモデルについて、画法や背景などをまとめました。

書斎の窓から差し込む光の下、研究に没頭する学者という図像は古くから描かれた伝統的な主題でした。

おそらくフェルメールもそれらを念頭に置きながら、海上覇権を握っていたオランダを支え、輝かしい未来に導く天文学に誇りを持つ「現代の学者」像を描こうとしたのでしょう。

下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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