【手紙を書く婦人と召使い】の作者はフェルメール!絵画の解説【決定版】
【手紙を書く婦人と召使い】は一心不乱に手紙を書く女主人と対照的な召使いの2人が描かれている作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】や【真珠の耳飾りの少女】などでお馴染みのヨハネス・フェルメールです。
【手紙を書く婦人と召使い】は、2度の盗難被害に遭いながらも無事生還した作品でもあります。
この記事では、そんな【手紙を書く婦人と召使い】について解説します!
①作品の概要
◎アイルランド国立美術館所蔵(アイルランド・ダブリン)
◎1670年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎71.5cm×60.5cm
女主人が手紙を書き終えるのをそばにいる召使いが待っています。
手前の床には本や印章、封蝋(手紙を閉じるための蝋)が落ちていますが、女主人は構うことなく一心不乱に筆を走らせています。
召使いが、そんな主人に無関心な様子で窓の外に目を向けているのが印象的です。
床に捨ててある手紙は書き損じと考えられていましたが、修復により届いた手紙と解釈が変わりました。
カーテンやタペストリーの描き方が非常に簡素で、画家の晩年の特徴を示しています。
背景に掛けられた絵は《モーセの発見》で、【天文学者】に描かれているものと同じです。
本作品は、以前のアイルランドの個人宅(ラスボロー・ハウス)にありましたが、1974年と86年の2度にわたって盗難にあったため、国立美術館に所蔵されることとなりました。
②作品の見どころ・解説
窓から差し込む光が薄暗い屋内で2人を柔らかく照らし出しています。
光を好んで描いたフェルメールらしい演出です。
足元には、他の作品にも登場する市松模様の床が広がり、机の手前には本と封蝋が無造作に散らばっています。
残念ながら女主人が書く手紙の内容は不明ですが、背後に掛けられた画中画《モーセの発見》が和解を内容とするところから、恋人の仲直りの便りとも推測できます。
女主人が、本と封蝋が落ちるのにも気にかけず、ことのほか熱心に手紙書きに熱中しているのはそのせいかもしれませんね。
③作品の画法・技法・背景
【手紙を書く婦人と召使い】は、【婦人と召使い】や【恋文】と同様、手紙を仲立ちとする女主人とお手伝いの女性の2人像です。
ただし前2作のお手伝いの女は女主人に手紙を届ける役目でしたが、この度は、女主人が手紙を書き終わるのを傍で待つという設定に変わっています。
おそらく原型は1659年に制作されたテル・ボルフの作品であろうと推測されます。
テル・ポルフの作品は、書き終わった手紙に押す封蝋を溶かす女主人と、その正面で待つお手伝いの女という構図です。
女主人の手元の赤い小さな本はおそらく手紙の文例集で、彼女が参照したのは恋文の書き方だったに違いありません。
なぜなら、この作品には、任務中の士官が伝令を待たせながら手紙を書いている対作品があるからです。
彼の書いている手紙が恋文であることは、机の前に落ちているハートのエースのカードから明らかです。
フェルメールも、机の手前に落ちた小さな本と封蝋を描いています。
本はテル・ボルフの場合と同様に、文例集とみて良いでしょう。
④おわりに
この記事では、【手紙を書く女と召使い】の作品の見どころや画法、背景などをまとめました。
【手紙を書く女と召使い】は後期の作品で、この時期の作品の簡略的・省略的様式は机を覆うタペストリーや左側にかかる白と緑のカーテンの描き方を見ると明らかです。
下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。