フェルメールがモチーフに用いたヴァージナルとは?その3つの作品
フェルメールの作品には、手紙やワイングラスなどの様々なお馴染みのモチーフがありますが、ヴァージナルもその一つです。
フェルメールは、ただヴァージナルを描いたわけではなく、様々な意味を含ませて描きました。
この記事では、楽器ヴァージナルについてやヴァージナルが描かれた3つの作品について紹介します!
ヴァージナルとは?
フェルメール作品にしばしば登場するヴァージナルとは、ピアノの前身であるチェンバロの一種です。
ピアノとチェンバロの違いは、ピアノがハンマーで弦を叩いて音を出すのに対して、チェンバロは爪で弦を弾くことで音を出します。
チェンバロはグランドピアノと同様に演奏者に対して垂直に弦が張られているのに対して、横方向に弦が張られているものが一般的にヴァージナルと呼ばれています。
簡単に移動させることができず、身の回りの置いて用いる道具の一つとして考えられていたヴァージナルは蓋の裏や響板に絵が描かれていたり、側面や台に彫刻が施されました。
また鍵盤横のスペースは裁縫箱や宝石箱などの小物入れとして使用され、蓋を閉じれば机になるため、女性の嫁入り道具として重宝されたようです。
ヴァージナルを弾くことは、当時の中流階級以上の女性のたしなみであり、フェルメールは理想の女性像とともにヴァージナルを描いたようです。
ヴァージナルが描かれた3つの作品
ヴァージナルの前に座る若い女
◎個人蔵
◎1670年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎25.2cm×20cm
フェルメール作品の中で最も近年に真作と認定された一枚です。
1904年から知られていましたが、1949年以来、フェルメール追随者の作品とされ、しかし2000年代に入って、科学調査の結果なども踏まえ、真作と認定されました。
1945年にメーヘレンの贋作騒動が起きたことをきっかけに、個人蔵の本作品も贋作と見られていましたが、1993年に始まった鑑定調査により真作と認定されました。
その根拠は、顔料や女性の髪型・服装が17世紀のものであること、イスなどにラピズラズリが使用されていること、カンヴァスの素材が【レースを編む女】とほぼ同一であることなどです。
2004年7月にロンドンのサザビーズで競売にかけられ、個人コレクターが1620万ポンド(約32億円)で落札して以降、ほとんど公開されず幻の作品になっています。
ヴァーズナルの前に立つ女
◎ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵(イギリス・ロンドン)
◎1670〜1672年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎51.8cm×45.2cm
40代に迎えてもなお創意を失わず、描き続けてきた「窓のある小部屋に立つ1人の女性」という主題で、画家は再び力作を生み出しました。
これまでで一番明るい室内には、ヴァージナルを弾く手を止めてこちらに目を向ける女性がいます。
頭の後ろには、他の作品にも登場する純愛の象徴キューピッドの絵が掛けられており、女性が恋していることを饒舌に物語っています
ヴァージナルの前に座る女
◎ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵(イギリス・ロンドン)
◎1670〜1672年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎51.5cm×45.6cm
【ヴァージナルの前に立つ女】と対であるといわれる作品ですが、作風は乖離しています。
女性の服装は似ていますが、袖の描き方などが本作品では平板で抽象的です。
髪の額縁も中の絵の簡略化され、最盛期のような質感への配慮が感じられません。
背後の絵は、娼婦を描いたバビューレンの【取り持ち女】であり、【ヴァージナルの前に立つ女】のキューピッドの絵(純愛を象徴する)とは対面的です。
43歳で病没したフェルメールの最後の作品と言われています。
おわりに
この記事では、楽器ヴァージナルについてやヴァージナルが描かれた3つの作品についてまとめました。
下記では、フェルメールの全作品をまとめていますので、コチラも合わせて参考にしてください。