【フェルメール】手紙を書く女の作品解説と画中画【決定版】
【手紙を書く女】は手紙を書く手を止め視線を向ける美女が特徴的な作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】などの作品でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。
また、この作品は、本作は1665年ごろ(フェルメール33歳)に制作されたフェルメール中期の作品だと考えられており、あの有名な【真珠の耳飾りの少女】と同年に描かれています。
この記事では、そんな【手紙を書く女】について解説しています!
①作品の概要
◎ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵(アメリカ・ワシントン)
◎1665年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎45cm×39.9cm
サイズは【真珠の耳飾りの少女】と同じくらいで、フェルメールが得意とした小さなカンヴァスに描かれた作品です。
本作品は、オランダやベルギーなどの多くのコレクターの手にわたった末に、1913年アメリカの富豪J・Pモーガンが購入したことで渡米しました。
彼の死後、再び別のコレクターに売り出され、その親族によって1962年、ワシントン・ナショナル・ギャラリーに寄贈されました。
②作品の見どころ・解説
羽ペンを持つ手を止めて、こちらに視線を送る美しい女性が描かれています。
注目したいのは、黄色いガウン、ライオンの飾りが付いたイス、真珠、そして手紙と、フェルメール作品に何度も登場するモチーフの数々が、ところせましと描かれているところです!
白い毛皮で縁取った黄色いガウンは【真珠の首飾りの女】など6作品に登場するものです。
この鮮やかな黄色のガウンは、フェルメールの財産目録にも記述に残っています。
黒い斑点模様の襟には、オコジョ(イタチの仲間)の毛が使われています。
左側から差し込んだ光が、真珠の耳飾りや髪のリボン、卓上のネックレスを輝かせています。
また、背もたれの部分にライオンの頭部があしらわれたイスが描かれています。
布を貼るための紙にもハイライト(光線の反射)が入っており、このイスもメタリックに光沢感を持って輝いています。
光の表現にこだわりを持っていたフェルメールにとって、光沢感を演出できる真っ白な真珠は、重要なモチーフでした。
女性の背景の画中画には、暗くてわかりにくいですが、恋愛を示唆するモチーフである弦楽器(ヴィオラ・ダ・ガンバ)が描かれており、女性は恋人に宛てた手紙を書いていると解釈できます。
このような「ラブレターと女性」の組み合わせもまた、フェルメールが頻繁に描いたシチュエーションの一つです。
ちなみに【手紙を書く女】の作品の構図はフランス・ファン・ミーリスの《真珠をつなぐ女》にきわめてよく似ています。
フェルメールが描いた手紙を主題とする6作品のうち、人物がこちらを向いているのは本作品だけで、これこそが本作品の魅力の1つなのです!
③作品の画法・技法・背景
手紙のやり取りの流行は、風俗画のなかに書簡画という下位ジャンルを付け加えました。
とりわけ1650年を過ぎた頃から、フェルメールの先例になるような作品をヘラルト・テル・ポルフが数多く手がけました。
兵士と伝令、同性の友人の前で恋文を書く女性、受け取った手紙を手にワインの飲み干す女性など、どれも物語性を色濃く漂わせます。
フェルメールには手紙を主題とした作品が、初期、成熟期、晩年と計6点伝わります。
それらのうち、初期と成熟期の作品はテル・ポルフの作例に比べ、シンプルにまとめられています。
④おわりに
この記事では、【手紙を書く女】の見どころや画法・背景などを紹介しました。
「手紙」を主題とした作品たちを見比べてみるのも面白いかもしれませんね!
下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。