フェルメールが表現した「寓意」とは?その4つの作品
フェルメールはその作品の中に込められたメッセージを「寓意(ぐうい)」を使って表しました。
この記事では、そんなフェルメールが用いた「寓意」について、そしてその作品について紹介します!
寓意(ぐうい)とは?
寓意とは、ある物事を言葉や絵などで直接的に表すのではなく、何か別のものを示し、それにかこつけて表すことをいい、多くは教訓や風刺の意味が込められました。
これは当時の絵画にだけあった手法ではなく、現代にだってあります。
例えば、現代の画家でもハートを描くときには「愛情」というような意味を、ハトを描くときには「平和」という意味を込めるでしょうし、見る側も、そのような意味を感じ取ります。
上の作品はパブロ・ピカソの《横たわる裸婦》ですが、右下に描かれている果物が「豊饒(ほうじょう)さ」を表しています。
それと同様のことが17世紀にもあり、寓意を読み解くための本も出されていたほどです。
フェルメールが表現した寓意
ワイングラス
フェルメールの作品にも意味深な道具が登場するとはいえ、その解釈は研究者も頭を悩ませます。
あからさまな表現になっていないため、どうとでも読み取ることができるからです。
例えば、【ワイングラス】を見てみましょう。
当時のオランダは、室内でワインを酌み交わす男女の図は恋愛を描く際の定番でした。
フェルメールもそこに着想を得たのだと思われます。
手前の椅子に楽器が置かれていて、楽器はしばしば愛を表すモチーフとされるので、この男女の間には愛情があると推測できます。
天秤を持つ女
【天秤を持つ女】は、特に解釈が難しいとされる作品です。
天秤は正しいことと不正なことを区別する寓意であり、壁に《最後の審判》の絵がかかっています。
最後の審判の際には、大天使ミカエルが天秤で一人一人の魂の純粋さを量り、それによってキリストが裁きを下すと言われています。
この大天使ミカエルと女性の姿が重ねるところから、宗教的な意味合いを持つと推測されます。
その一方で、家計を適切に管理する良妻を描いた、あるいはこれから生まれてくる子どもの性別を見定めているという見立てもあります。
電子顕微鏡で調査したところ、天秤の上には何ものってないことがわかり、彼女がどういう意図で何を量っているのか、真の意味は読み解けないままなのです。
絵画芸術
【絵画芸術】は、画家のアトリエを描いた作品です。
しかし、少女は歴史の女神クリオ、トランペットは名声、月桂冠は勝利、書物は知識、石膏のマスクは模倣を象徴します。
したがって、フェルメールはこの作品に画家としてのプライドを込めたのではないかと考えられています。
この作品は、フェルメールのお気に入りの作品で、生涯手放さなかったようです。
信仰の寓意
【信仰の寓意】ではさらに寓意性が高い作品になっています。
女性は信仰を、ガラス球は天上の世界、地球儀は現世、リンゴ・ヘビは原罪、十字架・聖書・聖杯・石はキリスト、磔刑図はキリストの受難の寓意です。
ごく普通の部屋に見えて、ここは信仰にまつわるモチーフが散りばめられた非現実の世界なのです。
フェルメール自身の信仰の表れともとれますが、イエスズ会(カトリック教会の男子修道会)から依頼されて制作したとも言われています。
実はこの作品は現在日本に初来日しており、日本で本物の作品を見ることができますよ!
おわりに
この記事では、寓意とその作品についてまとめました。
フェルメールの作品には直接的な寓意を極力控えた作品が多く、初めは寓意を描いていたけれども最終的には塗りつぶした、というような作品が多いです。
しかし、【絵画芸術】と【信仰の寓意】だけは異色の存在で、この2作品だけは明らかな寓意が満載なのです。
2021〜2022年には、日本で【信仰の寓意】を見ることができます。
下記では、日本で開かれるフェルメール展についてまとめていますので、コチラも合わせてご覧ください。