【フェルメール】水差しを持つ女の技法や解説【決定版】
【水差しを持つ女】は、3色を基調に描かれた光あふれる室内が特徴的な作品で、作者は【真珠の耳飾りの少女】や【牛乳を注ぐ女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。
この記事では、そんな【水差しを持つ女】について解説しています!
①作品の概要
◎メトロポリタン美術館所蔵(アメリカ・ニューヨーク)
◎1662年ごろ作
◎油彩・カンヴァス
◎45.7cm×40.6cm
【水差しを持つ女】は、青・赤・黄の3色を中心に構成されたフェルメールらしい室内画ですが、19世紀にはハブリエル・メツーかピーテル・デ・ホーホの作品と考えられていました。
窓枠、壁の地図、テーブルが女性を取り囲むようにバランスよく配置されており、構図に安定感があります。
「光の画家」にふさわしく全てのモチーフに光が当てられています。
水差しと水盤は聖母マリアの「純潔」の象徴で、同じく「純潔」の意を含む純白の頭巾の眩しさと相まって、清々しい印象となっています。
水盤の側面の写り込みや細やかさにも注目です。
なお、画面左下には当初、椅子が描かれていましたが、制作過程で消されています。
②作品の見どころ・解釈
水差しと洗面器の組み合わせは、カンピーンの《受胎告知》にも見られるように、15世紀以来、「純潔」のシンボルとして描かれてきました。
フェルメールの描く清々しい白の頭巾、朝の気配を感じさせる窓の青、清潔な室内も、中央の水差しと洗面器が伝統的に担ってきた意味を裏切りません。
ただ、この清浄なる世界はあくまでも世俗世界の中に偏在しています。
背後の壁にかけられた地図、つまりこの世の見取り図がそのことをはっきりと示しています。
テル・ボルフも水差しと洗面器の組み合わせを取り上げていますが、重点はあくまで女性の身支度に置かれており、伝統的な純潔の意味合いは薄いです。
③作品の技法・画法・背景
赤と青と黄色という同じように三原色を基調としながら、【牛乳を注ぐ女】と【水差しを持つ女】の印象はまるで違います。
明瞭さと見る者の目をそらさぬきっちりとした構成に貫かれた前者に対し、後者は薄いヴェールが掛かったように穏やかで、構成も実に緩やかです。
50年代末と60年代のフェルメールの様式の違いがこれほど明確に見てとれる作例は他にありません。
④おわりに
本作品の女性の上半身は、【取り持ち女】に出てくる娼婦の上半身に実によく似ています。
お金を受け取っていた右手に窓枠を、ワイングラスを握っていた左手に水差しを持たせれば、そのまま【水差しを持つ女】になります。
俗なる世界から、日常世界に染み出した清浄なる世界へと、フェルメールの風俗画の基本的な方向性をうかがわせます。
この記事では、【水差しを持つ女】について意味や解釈について紹介しました。
下記では、他にもフェルメールの全37作品をまとめていますので、こちらもあわせてご覧ください。