【フェルメール】リュートを調弦する女の見どころを解説【決定版】
【リュートを調弦する女】は地図と楽器と椅子が不在の恋人を暗示している作品です。
作者は【真珠の耳飾りの少女】や【牛乳を注ぐ女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。
この記事では、そんな【リュートを調弦する女】について解説しています!
①作品の概要
◎メトロポリタン美術館所蔵(アメリカ・ニューヨーク)
◎1662〜1663年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎51.4cm×45.7cm
【リュートを調弦する女】は、1660年代前半にフェルメールが盛んに描いた単身の女性像の一つです。
白い毛皮付きのサテン生地のマントを身にまとい窓辺で1人リュート(弦楽器の一種)を調弦している女性が描かれています。
女の左手の仕草から察するに、これから独り演奏を楽しもうということでしょう。
地図の縁と女性の頭部、リュートのネックがギリギリまで接近しながらも重ならないところが、画面にある種の緊張感と秩序をもたらしています。
②作品の見どころ・解説
【合奏】と同様に、楽器が鳴っているはずなのに部屋は静けさに満ちています。
女性の手にはリュートが、床にはチェロの前身であるヴィオラ・ダ・ガンバ、机の上には楽譜があり、「恋愛」を象徴する音楽に関係する小物が各所に描かれています。
画面の4分の1を占める地図の下部には「EUROPE」の文字があり、海には多くの帆船が描かれています。
このことから、描かれた帆船は「船乗り(航海)」を象徴し、女性の向かい側に空いたイスが大きく描かれていることや、窓に向けられた女性の視線も合わせると、彼女は不在の恋人に思いを馳せながらリュートを弾いていると推測できます。
③作品の画法・技法・背景
フェルメール中期の作品と考えられる本作品は、絵の具の摩耗部分が多くて読み取りにくく、またその来歴もわからない部分が多いです。
19世紀前半にアムステルダムで競売にかけられて以降、記録が途絶え、次に浮上したのは19世紀末です。
アメリカの鉄道王(コリス・P・ハティントン)が本作を購入し、ハティントンの死後、1952年にアメリカのメトロポリタン美術館に寄贈されました。
画面左側から黄金色の光が差し込む構図やテーブルなどの家具の配置から、【真珠の首飾りの少女】や【天秤を持つ女】と同時期の作品であると考えられます。
しかしながら、絵の具の摩耗が激しく、特にテーブルから手前の椅子にかけてはダメージが大きいので、当時のままの状態であるとはいえないです。
また、光が当たった女性の額は平坦で、眉が描かれておらず、同時期に描かれた他の作品と比べると少々奇妙な顔立ちをしているといえます。
④おわりに
【リュートを調弦する女】は、保存状態が良ければ、フェルメール中期において屈指の名作として数えられた惜しい作品です。
この記事では、【リュートを調弦する女】の見どころや画法・背景などを紹介しました。
下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。