【フェルメール】婦人と召使いの所蔵は?解釈は?【決定版】
【婦人と召使い】は、2人の表情と背景がドラマを想像させる作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】や【真珠の耳飾りの少女】などの作品でお馴染みの、ヨハネス・フェルメールです。
この作品はフェルメールには珍しく背景が黒く塗りつぶされているのが特徴の1つです。
この記事では、【婦人と召使い】について解説しています!
①作品の概要・所蔵
◎フリック・コレクション所蔵(アメリカ・ニューヨーク)
◎1666〜1667年の作品
◎油彩・カンヴァス
◎90.2cm×78.7cm
女主人と手紙を届ける召使いが描かれています。
その訳を知ったような顔と、女主人の戸惑ったような仕草から、手紙の差出人は訳ありの相手であることを察することができます。
黄色のガウンや青いテーブルクロスは【手紙を書く女】と同じですが、こちらには壁に絵がないばかりか、背景が黒く塗りつぶされています。
フェルメールの室内画には珍しい背景ですが、その分、鑑賞した人の想像を膨らませる余地があります。
また、他作品に何度も登場する黄色のガウンを、鮮やかに浮かび上がらせる効果があります。
なお、背景にはカーテンが描かれた形跡があるのですが、何者かが加筆した可能性があります。
②作品の見どころ・解釈
女主人が手紙を書いている最中に召使いが手紙を差し出しています。
アゴに手を添えた女主人の怪訝な表情は、フェルメールにしてはややオーバーなポーズで、背景に何も描かれていないことで、鑑賞者に正解のない様々なストーリーを想像させます。
もしかすると、フェルメールは、手紙の内容を限定することを好まなかったのかもしれません。
ちなみにフェルメールには、手紙をテーマにした作品が初期、成熟期、晩年と計6点伝わります。
③作品の画法・技法・背景
【婦人と召使い】と【手紙を書く女】は、同じ黄色のジャケット、青のテーブルクロス、インク壺、小箱を描くなど互いに設定や描かれているものが似ています。
しかし、召使いを登場させ、彼女との心理的なやり取りを想定するなど違いも大きく、逸話性をほのめかすのも、60年代以降のフェルメール作品の特徴でもあります。
フェルメールの風俗画のなかでは際立って大きいこと、座る女性の手や髪の部分、背後のカーテンをなお描き切っていないことなどを考え合わせると、注文で大画面の風俗画を試みたものの、途中で完成を断念した、といった状況が推測されます。
この作品同様に女主人と使用人という身分の違う2人と手紙とが登場する作品に【恋文】や【手紙を書く婦人と召使い】がありますが、いずれも使用人が主導権を握っているような印象を受けるのが興味深いです。
④おわりに
注意深く練られた構図とともに、小さくとも存在感を放つ手紙は、【真珠の耳飾りの少女】の真珠のように、「美」を表現するためのエッセンスだったのかもしれません。
この作品での工夫が、後年の、【恋文】【手紙を書く女と召使】へと変化していくのではないかと考えられています。
下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。