全作品解説

【フェルメール】恋文の見どころと解釈【決定版】

ヨハネス・フェルメール【恋文】の作品解説

【恋文】は隣の部屋からのぞき見る秘密の手紙の受け取りが描かれた作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】【真珠の耳飾りの少女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。

この作品は、一度盗難にあった作品で、以前は盗難による損傷も激しかったのですが、修復により完全に元の姿を取り戻しました。

耳飾りちゃん

この記事では、そんな【恋文】について解説しています!

①作品の概要

ヨハネス・フェルメール【恋文】の作品概要
基本データ

◎アムステルダム国立美術館所蔵(オランダ・アムステルダム)

◎1669〜1670年ごろの作品

◎油彩・カンヴァス

◎44cm×38.5cm

リュートの演奏中に召使いから手紙を届けられ、戸惑いの表情を浮かべる女主人が描かれています。

【婦人と召使い】に似た主題ですが、2人を隣の部屋からのぞき見しているような構図が新鮮です。

とはいえ、ピーテル・デ・ホーホに同様の構図の作品である《男と女のオウム》があり、フェルメールはそれに倣ったものだと考えられます。

手紙が恋文であることを示す壁に掛かった船の絵をはじめ、暗喩を込めた小道具がそこかしこに散りばめられています。

耳飾りちゃん

1971年、ベルギー・ブリュッセルのパレ・デ・ボザールで開催された展覧会に貸出中に盗難に遭い、ナイフで額縁から切り取られ大きなダメージを負ってしまいました。

女主人と召使い:この時代の主婦にとって、召使いを指導し監督することも大事な役割の人一つだった。なかにはサボったり手癖の悪い召使いもいて、彼女たちを仕切る主婦は結構苦労したようである。

②作品の見どころ・解釈

フェルメール【恋文】の寓意(モチーフ)

制作年代の推測からすると、【恋文】はフェルメール作品の中でも後期に属します。

物語性や寓意をそぎ落としていた前期と比べ、後期は登場するモチーフが増えています。

本作品では、女主人が恋にうつつを抜かしていることを示す楽器(リュート)や、放り出されたスリッパホウキなど意味深い小道具がたくさん描きこまれています。

また、2人の頭上にかけられた画中画は海の風景ですが、「海に浮かぶ船」は揺れ動く恋人たちの心情と重ねた恋愛の寓意とされます。

耳飾りちゃん

一般的に、風や波が穏やかな海は順風満帆な愛を意味します。

③作品の画法・技法・背景

フェルメールの作品のなかで、最も小さく人物が描かれた作品です。

おそらくは、風俗画家に転向して以来、フェルメールが関心を寄せ続けていたファン・ミーリスの60年代前半の細密な風俗画に刺激を受けたからであろうと考えられています。

ファン・ミーリスのその種の作品は上層階級に向けて描かれ、驚くほどの金額で買い取られていました。

この作品の構図はなかなか斬新なものではありますが、ピーテル・デ・ホーホに同様の構図の作品である《男と女のオウム》があり、フェルメールはそれに倣ったものだと考えられます。

ピーテル・デ・ホーホ【男と女とオウム】

立てかけられたホウキ、手前の部屋のイス、ドアの上のカーテンなど、2つの作品には共通点が見られます。

しかし、前の部屋の床を描き込み、人物を横向きに配置したピーテル・デ・ホーホの情景がどこかよそよそしい感じを与えるのに対し、見る者の視線が直接に向こうの部屋へ導かれるフェルメール作品では、正面から描かれることで人物の存在感が大きいです。

いたずらっぽく微笑む召使いと訳ありげな表情を浮かべる女主人の表情がはっきりと見えることから、鑑賞者は“のぞき見”している感覚をより鮮明に抱くような描き方になっています。

耳飾りちゃん

この頃は「プライヴェート」という概念が浸透しつつあった時代でもありました。

そういったところが「手紙」という主題やカーテンから覗き込むといった構図の作品に仕上がったのではないでしょうか。

④おわりに

実は、【恋文】はフェルメール自身がつけたタイトルではありません。

耳飾りちゃん

19世紀末にアムステルダム国立美術館が購入した際には【手紙】と呼ばれていました。

その後に図像学的な研究が進められ、楽器や画中画など恋愛を暗示するモチーフが多数みられることから【恋文】というタイトルになったのです。

この記事では、【恋文】の作品の見どころや解釈、時代背景などをまとめました。

下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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