光を巧みに操ったフェルメールの表現技法とは?3つの技法【決定版】
ヨハネス・フェルメールはオランダ出身の風俗画家で、現存する作品はわずか37点です。
そんなフェルメールの多くの作品は光を巧みに表現したものが多く、“光の魔術師”とさえ言われます。
この記事では、そんなヨハネス・フェルメールの作品に散りばめられている3つの光の表現技法について紹介します。
①左側からの柔らかな光
フェルメールの代名詞といえば、左側に窓が描かれておりそこから柔らかな光が差し込んでいることではないでしょうか。
現存する数少ないフェルメールの作品(37点)のうち、左側に窓が描かれ光が差し込んでいる作品は実に16作品にも及びます。
どれだけ、フェルメールが「光の表現」にこだわっていたかがわかりますね!
カラヴァッジョ、レンブラント、フェルメール、この3人には共通点があります。
光を巧みに表現した3人は「光の画家」という異名を持っていたのです。
カラヴァッジョやレンブラントはスポットライトのように一点から照らし、明暗のコントラストもくっきりとした強烈な光を描きました。
しかし、そのなかでもフェルメールは少しだけ違っていて、フェルメールの画面を満たす光は2人とは対照的で、薄いヴェールを通したかのように柔らかく拡散し、陰影もおぼろげです。
レンブラントを初め同時期に活躍した画家たちとの差別化を図ったのか、それとも自身の好みだったのかは定かではありませんが、フェルメールは他の画家とは違う光の表現方法を追求したのです。
フェルメールも初期には明暗のコントラストが比較的はっきりした作品を描いていました(【マルタとマリアの家のキリスト】)が、次第に洗練されて、穏やかで静謐な光へと変わっていきました。
②ポワンティエ(点綴技法)
フェルメールの様々な作品で見ることができる「ポワンティエ」は白い点描によって光の反射を表す技法です。
代表的な例が【牛乳を注ぐ女】で描かれているパンですね!
このパンをよく見ると、小さな点がたくさん描かれており、この白い点描一つ一つが光の粒(反射)を表しているのです。
しかし、ここにフェルメールの巧みな意匠を垣間見ることができます。
というのも現実には、こんなにパンが光を照り返して、キラキラ輝くはずがないからです。
輝くものは鑑賞者の目を引きつけます。
このポワンティエには鑑賞者の視線を誘導する役割があるのです。
下記では、ポワンティエについてさらに詳しくまとめていますのでぜひ参考にしてください。
③光の反射
光の反射を描いたのはポワンティエだけではありません。
光沢があるものに光が反射すると周囲の景色が映る現象を、フェルメールはよく理解していました。
それがよく分かるのが【真珠の耳飾りの少女】です。
肉眼では判別できませんが、作品に描かれている真珠には窓と白い襟が描き込まれているのです。
しかも、反射像はイヤリングの丸みに応じて歪ませてあります。
単なる光沢に見えますが、実は手の込んだ意匠がここにも散りばめられていたのでした。
ちなみに、光源の位置を考えると、イヤリングには光が当たりません。
もしありのままに描いていたら、少女の印象も随分違ったものになっていたことでしょう。
同様に、【婦人と召使い】で描かれているイヤリングには窓が描き込まれています。
おわりに
この記事では、フェルメールが用いた3つの光の表現技法についてまとめました。
フェルメールは、自然のまま描くのではなく自然に見えるように描くのがとても上手だったのです。
下記では、他にもフェルメールの全作品を解説していますので、コチラもあわせてご覧ください。