全作品解説

【フェルメール】レースを編む女の解説【決定版】

レースを編む女の作品解説
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【レースを編む女】は、女性の日常作業にスポットを当てた作品で、作者は【牛乳を注ぐ女】【真珠の耳飾りの少女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。

ちなみにこの【レースを編む女】が描かれた頃の作品からは、フェルメール晩年の作品と位置付けられています。

この記事では、そんな【レースを編む女】について解説しています!

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①作品の概要

レースを編む女
基本データ

◎ルーヴル美術館所蔵(フランス・パリ)

◎1669〜1670年ごろの作品

◎油彩・カンヴァス

◎23.9cm×20.5cm(現存する作品のなかで最小)

良家の娘らしき若い女性が、レース編みに熱中している場面です。

女性の視線、左右の手指と2本の糸、全ての角度が指先1点に鑑賞者を誘導します。

絵の小ささと相まって、張り詰めた空間のなか、この女性とともに指先に目を凝らすことになります。

女性の顔を温かく照らす光は、フェルメールの作品には珍しく画面の右側から差し込んでします。

また、下から見上げる構図には臨場感を増す効果があります。

②作品の2つの見どころ・解説

レースを編む女の技法(ポワンティエ)

小型の絵が多いフェルメール作品のなかでも最小の傑作です。

テーマ的には、女性単身像の作品群に連なるもので、家事をめぐる女性の美徳の一つを取り上げています。

ニュートラルな壁の前に女性を座らせ、各モチーフの重なり具合だけで奥行きを示唆するという点では、【青衣の女】に通じるところがあります。

【レースを編む女】は類似作品のなかでも、主人公の女性の仕事への集中度がひときわ高く見えます。

うつむいて手元を見詰める人物の姿勢もさることながら、右側から入ってくる柔らかな光の加減、青と黄、さらには赤と緑という【牛乳を注ぐ女】にも通じるような補色を基調とした色遣いも特徴です!

1.女性の身なりと所作

女性の髪型は、可愛らしい印象を与えるらせん形です。

巻き方を2つにまとめたその髪型は当時の流行の一端であったと思われます。

また、女性は黄色の衣服の上に白の幅広のレースの襟をつけており、これは女性自身が編んだものといわれています。

その女性の手元にも注目で、左手に2つのボビンを持ち、そこから伸びた糸はV字形を作っており、手元の布地にはポワンティエの技法が見られます。

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2.刺繍台と糸

隅に房がついた刺繍台は、上部が空けられるようになっており、裁縫道具をしまうための小物入れがついています。

また、手前の机の上に置いたクッション兼裁縫箱からはみ出し、まるで延びた飴のように粘りを帯びて垂れ下がる白と赤の糸にも特徴があります。

この抽象的な表現方法は、近代絵画ならいざ知らず、この時代の画家としては異例の絵画的な処理です。

クッションについてボンボン、クッションの脇の本の紐、テーブルクロスの右端の文様模様にたまる光の雫も印象的です。

こうした極端ともいえる様式ゆえに、この作品は自分の過去の様式を誇張しつつ繰り返したフェルメールの後期の作品に位置付けられます。

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③作品の画法・技法・背景

レースを編む女と子ども(ニコラス・マース)

17世紀オランダの風俗画家は、ボビンでレースを編む女性、あるいは裁縫にいそしむ女性のイメージを好んで取り上げました。

針仕事は、細心の注意と辛抱強さを必要とするため、当時の社会が女性に求める美徳の一つ「勤勉」のシンボルになっていたのです。

なので、若い女性は肖像画のなかで針をもたされ、主婦は育児をしながら家のなかで針仕事をする姿でしばしば描かれました。

裁縫修行の場ももちろん用意されていて、初等教育が終わった中・下層の子女は、男子は徒弟修行に、女児は裁縫教室に行くことが多かったようです。

つまり、裁縫の主題からは17世紀当時の性差による職業選択のあり方を読み取ることができるのです。

④おわりに

【レースを編む女】を機にフェルメールは、新たな様式の模索を始めていました。

それは「抽象化」ともいえる細部を省略した筆致です。

女性の顔も手も、影を表す暗色と肌色の色面を効果的並べるだけで、立体感を見事に表現しています。

この作品から、フェルメールの晩年期の作品の様式へと変わっていくのです。

この記事では、【レースを編む女】の作品の見どころや画法、背景などをまとめました。

下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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