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【フェルメール】ギターを弾く女の見どころ・解説【決定版】

ギターを弾く女の作品解説
vermeer

【ギターを弾く女】の作者は【牛乳を注ぐ女】【真珠の耳飾りの少女】でお馴染みのヨハネス・フェルメールです。

この作品は、背景に焦点を当てたフェルメールの変革期の1枚です。

この記事では、そんな【ギターを弾く女】の解説をしています!

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①作品の概要

ギターを弾く女
基本データ

◎ケンウッド・ハウス所蔵(イギリス・ロンドン)

◎1670年ごろの作品

◎油彩・カンヴァス

◎53cm×46.3cm

中心より左に人物を置いて身体の左端を断ち落とし、さらに顔を左側に向けて重心を完全に偏らせています。

人物ではなく背後の絵にピントが合っている点や額縁や髪などが異様に薄く平らに描かれている点も含め、フェルメールの画風が変革期を迎えたことを示しています。

この絵はフェルメールの死後、妻によりパン屋に代金の代わりとして、【手紙を書く婦人と召使い】とともに引き渡されました。

ちなみに、1974年にケンウッド・ハウスで盗難の被害に遭いましたが、2ヶ月半後に戻ってきています。

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②作品の見どころ・解説

ギターを弾く女の描き方

この作品は、ほかの作品とは違い右から部屋に光が差し込んでいます。

さらに、フェルメールの描く女性には珍しく、屈託のない明朗な笑みを浮かべています。

女性の輝くばかりのその表情から、その相手もまた恋人かもしれません。

当時、画家たちにとって楽器は男女の「愛」を象徴するモチーフの一つであり、男女間の愛を表現するために、絵画では楽器や音楽がこのように用いられてきました。

女性ではなく、背後の絵にピントが合っている点も見逃せません。

女性が手にするバロック・ギターは、歌い手の伴奏楽器として、17世紀末頃から急速にリュートに取って変わりました。

ギターを載せた右膝がサテンのドレスにひだを作り出しますが、その描き方は簡略化され、大きな筆遣いと暗部への深い切れ込みを特徴とします。

この作品は、フェルメールがカメラの原型とも言われている「カメラ・オブスキュラ」を使用していたという説を証明するものとしてしばしば取り上げられます。

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③作品の画法・技法・背景

フェルメールの後期の作品の特徴

【ギターを弾く女】と【ヴァージナルの前に座る女】はフェルメールの作品の中でも、最晩年に年代づけられる作品です。

というのも【ヴァージナルの前に立つ女】よりも描き方が簡略化される部分が多いからです。

よくわかるのが、画中画の金の額縁の描き方で、前者は平板のルーティンワーク、後者は質感に深い心配りが認められます。

最晩年のフェルメールは、体調を崩した義理の母の代理で貸し金の回収に忙しかった、もしくは、1672年のフランス軍の侵攻でフェルメールの仕事の歯車が狂った、とよく説明されます。

この変化の背後には、もう一つ大きな歴史の変革があります。

すでに60年代半ば頃から、オランダの風俗画全般が大きな曲がり角を迎えていました。

そうした中で肖像画家に転身する者、技法を変える者など、様々な動きがありました。

顧客の好みに大きな変化が起きたのです。

フェルメールをはじめとした風俗画家たちは、その変化にどう対応するか、それぞれに苦労し、ちょうど1670年ごろから先の見えない模索の状態に突入しました。

フェルメールの様式の激変は、そうしたなかで画家が市場を睨んで試行錯誤していた跡なのではないでしょうか。

④おわりに

この記事では、【レースを編む女】の作品の見どころや画法、背景などをまとめました。

【レースを編む女】は、フェルメールの描き方の変わり様やその後の事件が興味深い作品となっています。

下記では、他にもフェルメール作品(全37作品)を一覧にしてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

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