フェルメールの絵(作品)の5つの特徴【完全版】
【牛乳を注ぐ女】や【真珠の耳飾りの少女】などの有名な作品を描いたのがヨハネス・フェルメールです。
フェルメールの作品には、他の画家にはないような特徴があります。
この記事では、そんなフェルメールの作品の5つの特徴について紹介します!
①室内風俗画が作品のほとんど
「◯◯な女」というタイトルの作品が多いのがフェルメールの一つの特徴です。
彼は、約20年の画家人生の多くを女性が主役の室内風俗画に費やしました。
それは国王も貴族もおらず、教会の権威とも距離をおいた新しい国オランダならではです。
社会の主役である市民たちが、自分たちがモデルの風俗画を好んだのでした。
フェルメールの作品はほとんどが室内風俗画ですが、2点だけ都市景観画も描いています。
②高度な空間描写
フェルメールの作品には、高度な空間描写が散りばめられています。
例えば、上の写真は【牛乳を注ぐ女】ですが、女性の右手の上には実は小さな穴があります。
これはフェルメールがカンヴァスにピンを刺した跡(消失点)です。
正確な構図を得るために、白い粉をまぶした糸を何本かピンに結んで、画面の外側に向けて張り、その糸をはじいてカンヴァスに白い跡をつけ、その線をなぞることで、窓枠などを作品上に組み立てたのです。
これは遠近法で描くための方法で、一点消失法といいます。
③光の表現方法
フェルメールは「光の魔術師」と呼ばれるほど光の表現方法に卓越していました。
その中でも、特にフェルメールの独特の表現であるのが「ポワンティエ(点綴法)」です。
窓からの光がテーブルの上のパンに反射して、ゴツゴツした質感まで表現されています。
光の反射は明るい色の絵の具を使用して点を描いているのです。
ちなみにテーブルのパン籠にも同じ技法が使われています。
④鮮やかな色彩
フェルメールの作品の特徴の一つとして、極端に色の数が少ないことも挙げられます。
【真珠の耳飾りの少女】や【牛乳を注ぐ女】などを見ても、画面で目を引くのは青、そして黄色の二色です。
特に「青」にはこだわりがあり、古代から珍重された宝石・ラピズラズリを粉末にした高価な絵の具を使っていました。
このため、画面の中で際立つ独特な青は「フェルメール・ブルー」と呼ばれています。
この青を、例えば、作品の中の赤いスカートや黄色い着衣などにも混ぜていたほど、好んで使用していました。
そして黄色は、正反対の色として青と隣り合わせて配置することによって補色の効果を生み、互いの色をもっと引き立て合う役割を果たしているのです。
この「フェルメール・ブルー」の塗料は一般的な塗料の100倍の値段でした。
⑤現存する作品が少ない
43年の生涯のうち、画家として活動したのは20年ほどです。
22歳の時に起こった故郷・デルフトの火薬庫の大爆発事故で初期の作品が消失してしまったとも言われ、現存するのは37点だけです。
そのうちの数点を、フェルメール自身の作品ではないと指摘する研究者もいます。
特に初期の作品は、有名な【真珠の耳飾りの少女】などとは技巧も作風も非常に異なるので、真贋が揺れています。
とすると、フェルメールは一年間で一点ないし二点の作品しか描かなかったことになります。
晩年は義母の仕事も手伝っていたため、じっくりと制作に没頭する時間が少なかったのかもしれません。
まとめ
フェルメールの作品の特徴をまとめると、
①ほとんどの作品が室内風俗画
②高度の空間描写(一点消失点)
③巧みな光の表現方法(ポワンティエなど)
④鮮やかな色彩(フェルメールブルー)
⑤現存する作品は37点のみ
卓越した意匠が散りばめられているフェルメールの作品たちは、世界の17の美術館にのみ所蔵されています。(2点を除く)
現存する作品が37点しかないというその希少性も手伝って、フェルメール作品の謎めいた魅力は増しているのです。