【解説】大塚国際美術館に行くなら絶対見たい!フェルメールが描いた8作品
大塚国際美術館は徳島県にある美術館で、ここではフェルメールの作品(複製画)を8点も見ることができ、オリジナル作品と同じ大きさで原画が持つ本来の美術的価値を味わうことができます。
この記事では、大塚国際美術館に行くなら絶対に見たいフェルメール作品8点について紹介します!
大塚国際美術館とは?
大塚国際美術館は、古代壁画から現代絵画に至るまで西洋絵画約1000点を陶板に再現し、展示する陶板名画美術館です。
大塚国際美術館では、ムンクの「叫び」やダヴィンチの「モナリザ」など誰もが知ってる世界の名画を一挙に鑑賞することができますよ!
そしてここでは、フェルメールの作品を原寸大で8作品も鑑賞することができます。
広い館内の一角にフェルメールの複製品が集まる展示室があります。
所在地:徳島県鳴門市鳴門町鳴門公園内
開館時間:9:30〜17:00
休館日:毎週月曜日(祝日は開館、翌日休館。その他特別休館あり)
料金:3240円(前売り3100円)
電話番号:088-687-3737
大塚国際美術館に展示されているフェルメール作品一覧
作品名 | 所蔵先 |
小路 | アムステルダム国立美術館、オランダ(アムステルダム) |
デルフトの眺望 | マウリッツハイス美術館、オランダ(ハーグ) |
真珠の耳飾りの少女 | マウリッツハイス美術館、オランダ(ハーグ) |
青衣の女 | アムステルダム国立美術館、オランダ(アムステルダム) |
牛乳を注ぐ女 | アムステルダム国立美術館、オランダ(アムステルダム) |
ヴァージナルの前に立つ女 | ナショナル・ギャラリー、イギリス(ロンドン) |
ワイングラスを持つ娘 | アントン・ウルリッヒ美術館、ドイツ |
地理学者 | シュテーデル美術館、ドイツ |
①小路
◎アムステルダム国立美術館所蔵(オランダ・アムステルダム)
◎1658年ごろ作
◎油彩・カンヴァス
◎53.5cm×43.5cm
人物画で知られるフェルメールの、現存する2点の風景画の一つです。ちなみにもう1点は【デルフトの眺望】です。
フェルメールの故郷デルフトでは、16世紀半ばに事故や火災で中世の建物の多くを失い、17世紀半ばに記録として都市景観画を描くことが流行しました。
本作品は、フェルメールが実家から見える養老院を描いたものだといわれていますが、実在した風景に脚色を加えたものだとの説もあります。
しばしばフェルメールのアトリエの窓から見える実家「メーヘレン」の裏通りを描いたのではないかとも言われており、この作品の場所についてはいまだに諸説あります。
伝統的な建物の右端を大胆にたち落とす構図で真正面から描きました。
ごく小さく描かれた人物たちが、平穏の暮らしの温かさを効果的に伝えています。
②デルフトの眺望
◎マウリッツハイス美術館所蔵(オランダ・ハーグ)
◎1660年〜1661年ごろ
◎油彩・カンヴァス
◎96.5cm×115.7cm
本作はデルフトの街並みをスヒー港から眺めた風景画で、マルセル・プルーストに「世界でもっとも美しい絵画」と絶賛されました。
時刻はスヒーダム門の時計から午前7時10分であることが分かります。
日中には大きな賑わいを見せるデルフトの玄関口ですが、まだ陽は昇りきっておらず、人もまばらで閑散としています。
オランダでは雨の降る日が年間180日を超えることもあり、絵のような雨上がりの曇天が多いです。
描かれているのは夏の初めで、覆いかぶさるようなような暗い雲や、水蒸気に反射してきらめく光をあますことなく表現するために、フェルメールは画面の7割を空に費やしました。
雲間から覗く空には、愛用のウルトラマリンブルーの絵の具が使われています。
また、水面にもウルトラマリンブルーが使われており、白い下塗りの上に薄く塗り重ねることで透明感を出しています。
建物の影の部分は茶色がかった灰色と、灰色がかった青い絵の具で表現しています。
そこには、なんと砂が混ぜられています。
下塗りにも粒の粗い絵の具が使われており、厚く絵の具を塗り重ねた表面には凹凸が出ています。
これが光を乱反射させ、雨に濡れた街の輝きを表現しています。
薄く塗られた空や水面との対比によって、さらに立体感が強調されています。
③真珠の耳飾りの少女
◎マウリッツハイス美術館所蔵(オランダ・ハーグ)
◎1665年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎44.5cm×39cm
潤んだ大きな瞳と、少し開いた口元という、まさに振り向いた瞬間を写真で捉えたかのような本作品は、「オランダのモナ・リザ」とも呼ばれています。
ターバンの青と衣服の黄色、わずかな白、そしてくちびるの赤と使われている色は少ないですが、それが平坦な黒い背景によって引き立てられています。
この個性的な顔立ちの少女は、誰がモデルなのかわかっていませんが、トローニー(不特定多数の胸像)説が有名です。
④青衣の女
◎アムステルダム国立美術館所蔵(オランダ・アムステルダム)
◎1663年ごろ作
◎油彩・カンヴァス
◎46.5cm×39cm
どこの誰から届いたのか、夫のなのか恋人なのか、書かれているのは嬉しい知らせなのかそうではないのか、表情からうかがい知ることはできませんが、だからこそ絵を見るものは、自由に想像できます。
モチーフとなるものがかなり少なく、選び抜かれた家具の置き場所やシンプルな空間の構成が高く評価されています。
⑤牛乳を注ぐ女
◎アムステルダム国立美術館所蔵(オランダ・アムステルダム)
◎1660年ごろ作
◎油彩・カンヴァス
◎45.5cm×41cm
メイドがパンプティングを作っている場面です。
その人物の立体感、周囲の物や注がれる牛乳の筋などに見られる写実性、それらを柔らかく照らしている光の表現など、フェルメールのすぐれた技量が随所に見てとれます。
特に、光に照らされているパンやカゴなどのハイライト部分に用いられているのは、明るい絵の具の点によるポワンティエ(点綴技法)という、フェルメール絵画最大の特徴です。
なお、テーブルの四角形を画家が意図的にゆがめて描いたものとされていましたが、近年、五角形のテーブルがオランダで発見されたので、見たまま描いたという説や、八角系の折り畳み式のテーブルの片方を畳んだ六角形の台を用いているという説もあります。
⑥ヴァージナルの前に立つ女
◎ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵(イギリス・ロンドン)
◎1670〜1672年ごろの作品
◎油彩・カンヴァス
◎51.8cm×45.2cm
40代に迎えてもなお創意を失わず、描き続けてきた「窓のある小部屋に立つ1人の女性」という主題で、画家は再び力作を生み出しました。
これまでで一番明るい室内には、ヴァージナルを弾く手を止めてこちらに目を向ける女性がいます。
頭の後ろには、他の作品にも登場する純愛の象徴キューピッドの絵が掛けられており、女性が恋していることを饒舌に物語っています。
⑦ワイングラスを持つ娘
◎ヘルツォーク・アントン・ウルリッヒ美術館所蔵(ドイツ・ブラウンシュヴァイク)
◎1658年ごろ作
◎油彩・カンヴァス
◎77.5cm×66.7cm
フェルメールの他の作品である【ワイングラス】と同じ室内で、同じくワインを飲む男女ですが、こちらは男性二人に対して女性が一人です。
ワインを勧める男性の視線を避けるように、女性はコチラを向いて微笑んでいます。
誘う男と誘われる女、背後にいるのは断られた男という図式で、【ワイングラス】よりも人物が前面に配置されていて、床の模様が隠されているところに、作者フェルメールの試行錯誤の跡が見てとれます。
⑧地理学者
◎シュテーデル美術館所蔵(ドイツ・フランクフルト)
◎1669年の作品
◎油彩・カンヴァス
◎51.6cm×45.4cm
【地理学者】は【天文学者】と対になると考えられる作品で、モデルも同一人物と言われています。
【天文学者】より明るい室内では、男性が右手にコンパス(ディバイダー)を握り、大きな海図らしき紙を広げています。
床にも巻かれた状態の海図が2本あり、背後に地球儀と地図があるのはいかにも地理学者らしいです。
男性が来ているガウンは、「ヤポンス・ロック」と呼ばれる日本の着物です。
当時世界を股にかけて活動していたオランダの東インド会社が遠く東洋の島国からもたらした衣装は、当時の富裕層のステータス・シンボルにまでなりました。
なお【天文学者】と【地理学者】にはそれぞれ1668年、1669年と年号が記されており、制作年が特定できる数少ない作品です。
他に、年号が記されている作品は、【聖プラクセディス】と【取り持ち女】の2点だけ。
おわりに
この記事では、大塚国際美術館で見ることができるフェルメールが描いた8作品についてまとめました。
実は、大塚国際美術館以外でも日本でフェルメール作品を鑑賞することはできます。
下記では、フェルメール作品を日本の美術館で鑑賞する3つの方法についてまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。